
海外との取引を始めたばかりのメーカーや商社のご担当者様にとって、
コンテナ輸送は「複雑」「専門的」「間違えたら怖い」というイメージがあるかもしれません。
この記事では、そうした初心者の方でも安心してコンテナ輸送に取り組めるよう、
時系列にそってわかりやすく手順と注意点を解説していきます。
1. コンテナ輸送とは?概要と種類まずは基本を押さえましょう。
コンテナ輸送とは、金属製の大きな箱(コンテナ)に荷物を入れて船で運ぶ方法です。
国際輸送で最もよく使われており、安全性・コスト効率・利便性に優れています。
主な輸送形式:
FCL Full Container Load 1社でコンテナ1本を使用(大量輸送向き)
LCL Less than Container Load 他社と混載して1本をシェア(少量輸送向き)
本記事では「FCL(コンテナ1本を1社で使う)」方式で解説します。
2. コンテナ輸送の全体の流れ(9ステップ)
以下が、代表的なコンテナ輸送の流れです:
- インコタームズ(貿易条件)の確認
- 見積取得とブッキング依頼(フォワーダー・船会社)
- 書類準備(インボイス、P/Lなど)
- 梱包・コンテナ詰め(バンニング)
- 港への搬入(CYまたはCFS)
- 輸出通関
- 船積み・出港
- B/Lの発行と送付
- 現地通関〜納品
それぞれ順に解説していきます。
3. ステップ別にわかる輸送手順と注意点
ステップ①:
インコタームズ(貿易条件)の確認
「どこまでが売主の責任か?」を明確にするための国際ルールです。
最初に、契約書などでこの条件を確認・合意しておくことが重要です。
代表的な条件:
FOB(Free On Board):本船に積むまでが売主の責任
CFR(Cost and Freight):目的地港まで運賃込み
CIF(Cost, Insurance and Freight):CFRに加えて保険も売主負担
DDP(Delivered Duty Paid):買主の倉庫まで売主が全額負担
→ この条件によって、誰が輸送手配や通関費用を負担するかが変わります。
ステップ②:
見積取得とブッキング依頼
(必要なケース:CIF・CFRなどのプリペイド条件)
輸送にかかる費用やスケジュールを把握するために、
見積(Quotationを取得します。
見積が必要になる主な契約条件:
CFR / CIF:運賃や保険を売主が手配・負担する必要があるため、見積が必須
FOBなど:輸送費用は買主負担だが、国内手配分の見積が必要になります。
見積を依頼する相手:
フォワーダー(国際物流業者) →コンテナ手配、海上輸送、通関、保険などを一括で見積・手配
船会社(キャリア)→ 海上運賃・スケジュールの直接見積。大型貨物や定期輸送向け
見積依頼時に伝えるべき情報:
- 荷物のサイズ・重量・数量
- 出発地(港)と仕向地(港)
- 出港希望日、納期希望
- 希望契約条件(例:CIFシンガポール)
- その他希望(Door to Port, CY to CYなど)
→ 見積内容に納得したら、ブッキング(予約)依頼を行います。
予約が完了すると「ブッキングナンバー(予約番号)」が発行されます。
ステップ③:輸出書類の準備
輸出に必要な代表的書類は以下の通りです:
書類 内容
- インボイス(Commercial Invoice) 商品内容・価格を記載する請求書
- パッキングリスト(Packing List) 梱包の内容・寸法・重量など
- その他 原産地証明書・SDSなど、商品に応じて必要
書類のミスや漏れは通関・船積みの遅延につながるため、ダブルチェックが必須です。
ステップ④:梱包とコンテナ詰め(バンニング)
輸送中の破損や荷崩れを防ぐために、適切な梱包を行います。
パレットに載せることで積み降ろしがスムーズに
**ラッシング(固定)**で荷物をしっかり固定
湿気対策や衝撃吸収など、目的地の気候や輸送期間に配慮して梱包します
ステップ⑤:コンテナ搬入(CY)
用語 内容
CY(コンテナヤード)搬入 FCL貨物のコンテナを港に持ち込む場所
搬入期限(カット日)を守らないと、予定の船に積めず輸送遅延の原因になります。
ステップ⑥:輸出通関
輸出時には税関への申告(通関)が必要です。
通関業者またはフォワーダーが代行
インボイスやパッキングリストの内容に基づき**HSコード(品目分類)**を記載
通関許可が下りないと、船に積むことができません
ステップ⑦:船積み・海上輸送
通関許可が下りた後、コンテナは船に積まれて出港します。
目的地 輸送日数の目安
アジア圏 5〜10日
アメリカ西岸 10〜15日
ヨーロッパ 20〜30日
ステップ⑧:B/L(船荷証券)の発行と送付
船積み後、フォワーダーまたは船会社からB/L(Bill of Lading)が発行されます。
B/Lの役割:
- 船会社が貨物を預かった証明書
- 貨物の所有権を示す重要書類
- 現地で貨物を引き取る際に必要
B/Lの形式:
種類 内容
- オリジナルB/L 紙で発行され、買主に郵送される(通常3通)
- サレンダーB/L 原本を使わず、電子的に貨物引取が可能
- シーウェイビル 貨物の通知書。所有権の証明にはならない
※送付の遅れは現地での引き取り遅延につながるため、早めの処理が必要です。
ステップ⑨:現地通関・配送・納品
仕向港に到着後の主な流れは以下の通り:
通関申告と関税支払い(現地通関業者)
船会社から**D/O(デリバリーオーダー)**を取得
コンテナをトラックで最終納品先へ配送
DDPやDAP条件では、この部分まで売主が責任を持つため、現地の業者選定も重要です。
4. よくある失敗とその回避策
シーン よくある失敗 回避方法
- ブッキング スペースがなく予約できない 繁忙期は3〜4週間前に手配
- 通関 HSコードの誤りで通関保留 商品の分類を事前に調査
- 搬入 カット日を過ぎて積み残し スケジュール逆算・日程厳守
- B/L送付 B/Lが届かず貨物が引き取れない サレンダー方式や早期処理を検討
5. まとめ:コンテナ輸送は段取りで決まる!
コンテナ輸送は、段取りとパートナー選びが成功のカギです。
✅ インコタームズを理解し、責任範囲を明確にする
✅ 必要な場面で正しく見積を取り、早めにブッキング
✅ 書類の正確さとスケジュール管理を徹底する
✅ 信頼できるフォワーダー・通関業者と連携する
初めてでも、ひとつずつ流れを押さえていけば大丈夫です。
安心・確実な国際物流を実現しましょう!